36 阿蘇(熊本地震)

#36


有阿蘇山、其石無故火起接天者、俗以為異、因行禱祭

 636年に成立した中国の随書の一文である。「阿蘇山という山があり、石のないところから火が立ち上り、天の神に接している。人々はこれを神異とし、祷祭を行っている。」

 古代から阿蘇の山は、地震を伴う火山の山として扱われてきた。その鎮守のために建てられた阿蘇神社は、阿蘇山がその兆候や、実際の動きを見せるたびに、朝廷から官位を与えられ、重要な神社としての地位を上げてきた。明治以降は、肥後国一宮の式内社である。つまり、阿蘇神社の歴史そのものが、この地の災害の歴史であり、阿蘇神社は災害の教訓を後世に伝えてきた遺産ともいえる。16日の阿蘇神社の社殿倒壊は、まさにその事実を伝えるためのものとも思える事態だった。阿蘇神社は、その存在自体で、過去から火山地震災害の注意を呼び掛けてきたのである。

 今回の地震の直下の活断層として、布田川断層、日奈久断層。周辺のものとして、雲仙断層、別府-万年山(はねやま)断層が認められているが、大きくは日本を横断する、中央構造線上にあることを忘れてはならない。地震国である日本に住んできた人々は、その経験から、阿蘇をはじめ、中央構造線上に神社を置いて、それらの地を鎮守してきたのである。伊勢神宮・浅間神社などの諸社が、その警戒を伝えている。

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