54 中国地方北部で発生した地震

#54


 2016年10月21日午後2時頃、鳥取県の倉吉市を震源とした中国地方北部に、震度6弱クラスの強い地震が発生した。前回の話しの中で、中国地方の地震と大日如来、牛の守り神ついて言及したが、今回の地震は、その直後だっただけに驚いた。著者も岡山県北部に親戚があり、人ごとではない。震災を受けた中国地方の方々には謹んで御見舞申し上げたい。

 この地方の地震の歴史を振り返ると、テレビなどでは昭和以降の最近の地震の様子を伝えているが、遡ると、元慶四年(880)に出雲国(島根)と都で同時に地震が起こった記録がある。その地震の構造は、伯耆国(鳥取)から都に至る断層の連携によるものだったらしい(保立道久氏)。

 著者の考えでは、ちょうど出雲から京都に至るこの地域周辺で、今となっては農耕の牛の守り神として扱われているが、本来大日如来と牛は、「地震の神」だったと考えている。

   岡山県では、大日如来の石塔は、苫田郡の山間部に特に密に分布している。新庄村から美甘村にかけては、島根半島七瀬の大日講を通じて大日信仰が浸透している。岡山県美作地方の中山神社、島根県安来市の縄久利神社、鳥取市牛戸の大日寺、鳥取との県境にある兵庫県の長楽寺などでは、現在でも大日如来と牛を奉る行事が行われている。

 人知に尽くせない災害に、何もなす術の無かった古い人達は、何とかその危険から逃れられないか、藁にもすがったのかもしれない。その形跡が我々に、災害の注意喚起を行っているのではないだろうか。



引用参考文献

・保立道久「歴史の中の大地動乱」岩波新書、2012年

・渡辺満久、中田高ほか「鹿島断層(島根半島)東部におけるトレンチ調査」日本地震学会秋季大会予稿集、2006年

・KAKEN - 中国山地における牛馬飼養をめぐる民俗の比較研究(09610316) - 2000年度研究実績報告書

・伊勢志摩国浅間信仰図「Vol53 身禄の里 美杉町1 浅間さんと大日信仰」2016年

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