51 神の島の富士信仰 鳥羽神島

#51


 鳥羽の神島で、富士参詣に関わる古い資料が日の目を見た。以前にも紹介したが、神島は、伊勢湾入口に浮かぶ孤島であり、古墳期の銅鏡の発見や、大和から見た太陽信仰の起点となる位置から、神秘の島と言われている。一年を通して様々な神事が行われており、特に大晦日から元旦にかけて行われるゲーター祭りは、神体の輪を竹で持ち上げる風習で有名である。その神島で、富士講の具体的な資料が現れたことは興味深い。資料の中には、滋賀県甲賀の修験寺院飯道寺の有力坊だった「梅本院」の文字も見れ、滋賀から伊勢をまたぐ布教の流れの解明にも繋がりそうである。

 今回の調査は、静岡県富士山世界遺産センターの大高先生、首都大学東京の菊池先生、松田民俗研究所の松田先生、富士市かぐや姫ミュージアムの井上先生、そして地元鳥羽郷土史会の江崎氏らによって行われた。これまでにも、神島の富士講に関わる資料の報告がなされたことはあるが、現在のように、いわゆる富士山学が確立した状況で富士講の具体的な調査が行われたのは初めてである。先生方の事前調査と、ここまでこぎつけた江崎氏の功績は大きい。 今後先生方によって、富士信仰の系統立った知見を持って資料の精査・解釈が行われ、神島と富士との関わりの一端が明らかになっていく。神の島の歴史に、新たなページが加わろうとしている。


引用参考文献

・「神島」伊勢志摩国浅間信仰図(Vo.30)、2016年

・ 「忍者が繋ぐ伊勢と滋賀県甲賀」伊勢志摩国浅間信仰図 (Vo.33)、2016年


0コメント

  • 1000 / 1000